朝ドラ『なつぞら』夕見子サマにゾッコンになってしまったわ
4月から始まった朝ドラ100作目の記念すべき『なつぞら』。
今回の主人公は、『ひみつのアッコちゃん』『魔法使いサリー』などの奥山玲子さんがモデルと言われており、主演の広瀬すず演じる奥原なつがアニメーターを目指すという物語です。
戦争孤児となったなつは、父親の戦友・藤木直人に十勝へ引き取られるのですが、その生活がなんと羨ましいこと。
北海道で暮らす広瀬すずの周りには、吉沢亮、岡田将生、工藤阿須加、犬飼貴史、山田裕貴と国宝級イケメンたちが集結します。これぞ王子が大渋滞。
最終回は焼け野原で絶望の中でなつが目を覚まし、これまでの話は全部夢だった……そんな鬱展開でもおかしくないほど、これから待ち受ける物語は楽しみな要素しかありません。
しかし多くの朝ドラは第2週目の終わりくらいまで、子役パートが続きます。
まだまだ若い衆が登場しないため
ひとり『夕陽のガンマン』こと草刈正雄サマ演じる引取先の柴田家のお祖父様・泰樹の渋い魅力に注目が集まるばかりですが、
わたしは柴田家の長女・夕見子サマにシンパシーを感じてならんのです。
夕見子サマは、富士子(松嶋菜々子)と剛男(藤木直人)の美人夫婦の長女です。
子役パートは『人魚の眠る家』にも出演していた荒川梨杏ちゃんが演じます。
やっと戦争から帰ってきたお父さんは、戦友との約束のために一緒に連れて帰ってきたなつに付きっきり。
新入りへの警戒心と嫉妬が入り混じり、なつを邪険に突き放します。
一方なつは、孤児院から引き取られてきたので、「いい子」であることに徹します。
もともと兄弟想いの凄く優しい子なのですが、無条件で引き取ってくれた柴田家への「感謝」と「遠慮」が心に、薄くて厚い壁を作ります。
第1話の初対面から夕見子サマは一番、なつを拒絶します。
戦争から戻ってきた剛男の隣に立つなつを、富士子や長男の照男、泰樹は見つめるのですが、夕見子サマは首だけをなつの方を向け、すぐに視界から外してしまうのです。
肩越しになつを見る。
ほんとちょっとした仕草なんだけど、体の向きが違うだけで印象が変わるので、役者さんってすごいね。
そしていきなり第2話で事件が起こります。
夕見子サマは、なつに服をあげるようにお母さんに言われます。
それまで大人びた、(あくまでも大人びた)冷静な口ぶりだった
夕見子サマが、「やだ!やだ!やだ!」と駄々をこねて拒否するのです。
そこで彼女が言った言葉が以下。
「ずるい」
「その子がかわいそうなのは、わたしのせいじゃないもん」
「なんで、わたしが我慢しなくちゃなんないの?」
「その子は“勝手に”かわいそうになってるだけだべさ!」
わたしのLINEかと思った……。
凄くないですか?9歳。この言葉から今の今まで虜です。
このシーン実はあんまり夕見子サマのお顔が映りません。
なつが、夕見子サマの言葉を受けて、心を痛める顔にスポットライトが当たります。
しかも上の訴えも、なつを直接見てじゃなくて、お父さんとお母さんにぶつけるんですよね。
夕見子サマ、なっちゃんの方を見られないのは、
なっちゃんが嫌いで目を合わせないんじゃなくて、自分の考えが正しくないと心の何処かでわかってるからなんですよね、きっと。
夕見子サマ、本当に心は優しいんです。
でもね、北の大地で感情までのびのび育ってしまったものだから、
パパを取られるかもしれない不安と嫉妬が爆発しちゃったんだよね。
その後、第4話でお父さんと2人で話す機会が設けられます。
戦争孤児になったなつに夕見子を重ねて、連れてきてしまったんだと、父・剛男は明かしました。
「夕見子は夕見子のまま、あの子を受け入れてほしいと、父さんはそう願ってるだけだ」
夕見子サマは、この言葉を聞いて、なつと一緒に暮らすことを理解します。
ここの剛男、思ってるじゃなくて願ってるを使ったのがすごく丁寧で愛情を感じますよね。
引き取ったのは自分のエゴかもしれないから、押し付けるのではなく
「こうなったらいいな」を伝えるだけに留めました。
急すぎる環境の変化を上手に処理できなくて
なつのほうが「かわいそう度」が勝ってるから愛されてるんだっていう
歪んだ結論を出した夕見子サマにとって剛男のアプローチはとても響いたことに想います。
こうして夕見子サマは、なつに優しく接しようとするんだけど
ここからがまた大変で……。
【夕見子サマ】
・勉強が好き
・牛乳が嫌い
・嫌と思ったらはっきり言う
【なつ】
・仕事が好き
・牛乳も牛も好き
・相手の意見も受け入れる
という真逆の性格のなつが攻略できずに苦労するんです。
「無理して働かなくていいよ」って言ったら
「別に無理してないよ!」と言われるし
学校でいじめっ子にいじめられてるのに
なぜか言い返さず発言を認めて笑うなつに
「もっと言い返せばいいじゃない」と言ったら
「言い返してるでしょ」と言われるし……。
なつは本当のことを言っているだけで
悪気があって「NO」を突きつけているのでは決してないのだけど
自分の優しさ(と思っている行為)が否定され続けるので
とうとう夕見子サマはまた怒ってしまいます。
この歯がゆい関係……!
しびれを切らした夕見子サマは、なつにこう伝えます。
「はっきり聞くけど、あんたはこの家にいたいと思ってる?それとも仕方なく?」
「わたしは別にどっちだって良いのよ。ただ聞いておきたいだけ。はっきりしときたいのよ、あんたの気持ちを」
「だってそうじゃなきゃ、あんたをどう受け入れていいかわかんないんだもん」
ほんとはっきり聞いたわね、夕見子サマ。
でも返ってきた答えは「それなら、無理に優しくしなくていいよ(ニッコリ」。
そうじゃないよね。白黒はっきりしてほしかったんだもんね。
でもなっちゃんも悪くないんだ。
「無理に優しくしなくていいよ」は、「無理せず、そのままでいて」っていう
お父さんの言葉と同じようなニュアンスだったんだけど
「優しさ、いらないよ」って言われたように夕見子サマはきっと聞こえたんだよね。
接し方がわからず拒絶してたのに
いざ接しようとすると拒絶され(たような気になっ)てしまって
夕見子サマのやるせなさは、また怒りに変わります。
何を考えてるのか夕見子サマにはわからないなつですが、いよいよ感情が爆発する事件が起きます。
いつまで経っても手紙をくれない東京の兄の元へ行くため、なつが柴田家から家出をするのです。
しかしまあ小さな女の子の足ですので、第9話で河原で座っているところを柴田家に見つかります。
亡き父からの手紙を読んだ直後、一家揃った柴田家の姿を見て、なつは、戦争の悔しさをぶちまけます。
「どうして、あたしには家族がいないの」
「バカヤロー!チクショー!」
薄くて厚かった「いい子」の壁がパリンと割れた瞬間です。
「もっと怒れ!」泰樹は強く抱きしめます。
このシーンはきっと、これからダイジェストで語り継がれるくらい良いシーンでした。
心配した顔で静かに様子を見つめていた夕見子サマですが、
家族と一緒に帰路につく頃になると、なんだか嬉しそう。
だって、やっと理解したいと思える人のピンク色をした内側が見られたんだもん。
とても切ない場面だけど、それを夕見子サマが目の当たりにできたのって、彼女にとっても大きな経験だったよね。
その後、泰樹と付き合いのある菓子屋の「雪月」で
アイスクリームを食べるシーンがあるのですが、
牛が大嫌いな夕見子サマが搾乳に誘われます。
そこで一言。
「絶対にヤダ。わたしを巻き込んだら……家出するから(笑)」
といきなりなつの家出をいじるのです。
夕見子サマ〜〜〜!
ツンケンしてるから意地悪なように見えて実はとっても思いやりの強い子で
なつの家出も笑いに変えてあげられるんですよね。
で、面白いのはこの夕見子サマの性格は、母・富士子の受け売りだということ。
「なして、男って自分の身に置き換えて考えることしかできないのさ〜」
ってちょっと男の人を呆れたように見ている富士子のように
夕見子サマは「男って考えることがほんとに狭いよね」って言っちゃうんです。
ほんと可愛くて、愛おしい。
「めんこい」って褒められたら「知ってる」って答えるのも富士子イズムで、
家で見ている母の姿をそっくり映し出したのが夕見子サマなんです。
勉強が好きで一番しっかりしているように見えて、最も子供らしい子だわ。
だから夕見子サマがなつに抱いている「いい子すぎる気持ち悪さ」って
同じ世代の子供だからこそ感じられる点だなと思うのと同時に
視聴者が感じるであろう違和感をちょうどよく指摘して中和してくれるのが夕見子サマの役割なんだなと思います。
これから成長して福地桃子にバトンタッチされるわけですが
もう子供夕見子サマがいなくなってしまうのが、とっても寂しいわ。。
牛乳が飲めなかったり、
「できない自分」が嫌いで他者への怒りに感情をすり替えてしまったり、
そういう不器用な部分が自分と重なるから、きっとこの子が好きなんだろうな、わたし。
(マインドが9歳なのに気付かされて、同時に恥ずかしいけど)
公式ホームページでは
なつと同じ年の長女。なつに初めはわだかまりを感じるものの、一緒に暮らしていく中で、お互いに悩みを打ち明けられる、本当の姉妹のようになっていく。大嫌いだった牛乳も、なつのおかげで飲めるようになる。
って書いてるから、2人で一緒に成長していくのでしょう。
わたしは社会人になってからも牛乳は飲めないけど
ヨーグルトまで食べられるようになったわよ。
もしもあなたがわたしに似ているなら
これからあなたはきっと、「できない」「わからない」に
「大嫌い」「腹立つ」のラベリングをして拒絶することが何度かあると思うけれど
いくつもの「大嫌い」を乗り越えて、いつまでもめんこいままでいてね。。