クズでも頑張れる

やるときゃやる

「楽しいままで終わりたい」と自殺した中学生は正しいかもしれない

今月12日に、埼玉県の中学校で自殺した少女の遺書には

「いじめや家族間のトラブルではない。楽しいままで終わりたい」

と書かれていたそう。

 

遺族や友人には悲しい出来事だろうが

亡くなった少女の言い分は妙に納得できる。

「生きてりゃいいことある」を、今の子供たちに私は胸を張って言えない。そんな世の中になってきた。

 

私は映画の話しかできないので、その観点からみると

「世界への警告」を題材にした映画が多くなった気がする。

 

最近では『沈黙 -サイレンス-』。

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遠藤周作の小説を映画化したもので

これを外国人である マーティン・スコセッシが手掛けたのが

日本人のわたしにはとても悔しかった。

なぜ日本の映画業界はこれが出来なかったのか…。

 

邦画への嘆きは、ちょっと置いておきます。

マーティン・スコセッシが映画を撮ったということは

社会に何か伝えたがっている証拠だ。

『タクシードライバー』も、もちろんそうだった。

 

◆名作『タクシードライバー』の警告

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1975年に公開された同作は、タクシー運転手の主人公が現代社会への怒りや不満に精神を擦切らしていくという物語。

ロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィスは、ベトナム帰還兵という設定だった。

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当時のアメリカでは、戦場で奮闘した帰還兵が、せっかく無事に帰ってきた故郷で路頭に迷うケースは少なくなかった。

そのため、「やりきれないアメリカ社会がトラヴィスをああさせてしまった」と

解釈されがちだが、帰還兵は設定にすぎない。

なぜなら、『タクシードライバー』はアラバマ州知事暗殺未遂のアーサー・ブレマーによる「暗殺者の日記」が元ネタだからだ。

 

この映画で一番のテーマは「孤独」である。

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ブレマーは暗殺前の3か月間、家を持たず車で暮らし、誰とも会話を交わさなかったそう。

悪いのは社会や境遇ではない。孤独こそが破滅だぞとこの映画は伝えている。

それでは、今回スコセッシが伝えたかったものは何だろう。

◆『沈黙』は若い世代へのメッセージ

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キリシタン弾圧の日本を描いた本作で、

窪塚洋介演じるキチジローは圧倒的存在感のあるキャラクターだった。

隠れキリシタンのキチジローは、過去に一家全員で"踏み絵"を強いられたことがある。

その際は、キチジローだけが踏み、信念を貫いた家族は全員目の前で焼き殺された。

始めのうちは彼に同情してしまうが、

キチジローは作中、何度もためらう様子なく神を踏みつけ、そのたびに主人公の元へ「懺悔」しにくる。

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同志たちが拷問を受けたり処刑されるのを何度も見ているはずなのに、謝りゃいっかー★なって感じで踏み絵をサクサクと熟す。

この開き直りっぷりは、もはや清々しい。

 

そんなキチジローに対し、スコセッシは以下の通りに語っている。

 

「社会においては、みんなが強き者でなければいけないということはない。それは文明を維持していく唯一の手段ではないと思う」と本作に込められたメッセージを語ったスコセッシ監督。

スコセッシ監督が来日、『沈黙』がいま撮られるべき映画である理由とは? | ニュースウォーカー

 

一見クズとも見えるキチジローだが、

その弱さは、処世術でもある。

 

またスコセッシは、こうも話している。

 

「今、一番危険に晒されているのは、ここ5年ほどに生まれた若い世代です。勝者が歴史を勝ち取っていく世界しか知らない。世界はそういうものだと思ってしまってはいけません。
また、物質的・技術的になった今の世界だからこそ、人を信じるという心を真剣に議論すべきなのです。」

『沈黙‐サイレンス‐』スコセッシ監督来日レポ「一番危険なのは、強者至上の世界しか知らない若者世代」 | ORIVERcinema

 

弱者に厳しい未来が待ち受けている。

歴史上、国が信仰の自由を奪った時代があったように、

未来のわたしたちは強い者から自由を奪われるかもしれない。

そんな状況で生まれる「弱さ」を攻める必要はないとスコセッシは肯定してくれた。

弱いからこそ出来る、生き延び方がある。

わたしたちは、弱さを受け入れて、

それを強みに変換する力を身につけなけらばならなくなりそうだ。

 

◆映画は警告で溢れてる

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『沈黙』で、命を削るほどの演技を見せた塚本監督が手掛けた『野火』は

戦争を知る世代が減り、「戦争」への賛成派が増えてきたことを懸念し製作された。

「そのとき戦争を描こうと思ったのは、どうもその頃になると「時局によっては、戦争もやむなし」みたいな発言が公の場でぽつぽつ出てきたからなんですね。人間の本能として「戦争がしたい」と思う人たちがいても、そのころまでは戦争を体の痛みとしてハッキリ知ってらっしゃる戦争体験者の方たちが抑止力となっていた。ところが、その方たちがだんだんと亡くなり始めて、それを見計らって「いまなら言えるんじゃない?」みたいな雰囲気が漂い始めた」

lite-ra.com

 

フィリピン戦線を舞台にし、過酷な戦地で狂っていく兵士たちを描いた『野火』は、あまりにも悲惨な描写で話題となった。

トラウマとして、戦争に対する悪のイメージを植え付けることが、映画が今出来る精一杯なのかもしれない。

 

 警告するのはアメリカや日本だけではない。

こんなに平和そうに見える

スウェーデン映画でも触れられている。

 

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こちらはロイ・アンダーソン監督の『愛おしき隣人』。

彼の作品は、コメディーなのだがゾクッとする静かな恐怖を含んでいることが多い。

社会の教科書で一段と目を引く、「風刺画」のような作風だ。

 

小さな町に住む人々の日常が独特なタッチで描かれている本作。

その中のバーの店主がラストオーダーの際に言う

「明日があるから」というのが決まり文句がこの映画のカギになる。何度も出てくるので無視はできない。。

 

この作品に明確な主人公はおらず、

町の人々の生活がいろんな視点からピックアップされる。(普段あまり映画を見ない人には想像しにくい造り方かも…。すいません、文才)

町の人々は決して交わることはないんだけど、

さっきまで焦点が当てられていた人が画面の端にいたりする演出になっている。

 

近くに住んでいるという事以外共通店のない町の人々は

ラストシーンで一斉に空を見上げだす。

いつもの生活を止めて、空を見上げることに集中しだすのだ。

 

目線の先は、ミリタリー感あふれる飛行機。1機ではなくたくさん飛んでいる。

日常はちょっとしたことで、崩れてしまう。

あんなに毎日言ってた「明日があるから」は、何の前触れもなく根拠をなくしていくのだ。

 

◆今、子供を産めますか?

 

バカなわたしでも感じているということは

きっと世界は今、確実にヤバい方向に向かっているのだろう。

わたしたちは、未来が明るくないのを、どこかでわかっているが何もできない。

集団的自衛権の容認に反対し、焼身自殺未遂までした男性のことを世間はもう忘れている。

 

元々人の世話が苦手なので子供を産むつもりはなかったが、

これから誕生するかもしれない可能性があるわが子が

世界の不幸に関わるかと思うと、無責任に妊活なんて心配性の私はできない。。

(妊活批判とかじゃなくて、未来が怖いという話ですからね。。愛の結晶は最高です。)

 

 

「楽しいままで終わりたい」

少女の一言が再評価される日が来ぬことを祈るしかないのかな…。

終末時計は残り2分半です。